プリントネームタグと織りネームタグのちがい・織るか刷るか

タグデザイナーの机の上

 「プリントネームタグ」も「織りネームタグ」も、衣料品や雑貨に付ける「タグ」であることにはちがいないのですが、あまりよく知らないうちはどちらがどちらだか混乱することもあります。ここでは「プリントネームタグ」と「織りネームタグ」の共通点と相違点について整理します。

プリントネームタグとは

テープタグ

プリントネームタグは、「テープ状の素材にブランドロゴのプリントをほどこしたタグ」です。シャツの襟元の内側、デニムパンツのベルトまわり、あるいはベルト通しそのものになることもあり、スカートの腰まわりの内側などに縫い付けられたり、貼り付けられたりしています。

織りネームタグとは

折タグ

織りネームタグは、衣料品やバッグなどのメーカー名、会社名、服のサイズなどをデザイン化し、タグ状にしたものです。衣服の襟元、身頃の内側の脇腹あたり、バッグや財布の内側など、いろいろなところに縫い付けられています。文字通り布製で、ブランド名などが織り込まれ、あるいは刺繍で縫い込まれており、厚手でしっかりしています。

プリントネームタグと織りネームタグの共通点1・ブランド表示

リュックについたタグ

プリントネームタグはあまり太くないテープ状ですから、それほど多くの情報を載せられません。そのためほぼ「ブランド名」や「ブランドロゴ」のみを表示します。

織りネームタグの場合も、小型のものでブランド名・ブランドロゴしか表示していないものならば、はたらきはプリントネームタグとほぼ同じです。

プリントネームタグと織りネームタグの共通点2・縫い付け

縫い付け

双方とも、テープ状など小型の布製であることが多く、「衣服やバッグなどの製品に直接縫い付ける」ものである点は共通しています。そのため、長期間の使用や洗濯などをおこなっても簡単には外れることはありません。

プリントネームタグと織りネームタグの共通点3・家庭洗濯等取扱方法の表示

洗濯

双方とも長期間の使用、洗濯によっても簡単には外れないことから、長い期間にわたって持続的にユーザーに情報を伝える役割には向いています。そのように長期的に残す必要がある情報としては、家庭洗濯等取扱方法が典型的です。洗濯やお手入れ方法の誤りは製品を傷めてしまうこともあるので、いつでも確認できるように製品にしっかり付けておくことは重要です。この役割はプリントネームタグと織りネームタグの双方ともに向いています。

プリントネームタグと織りネームタグの共通点4・ブランドの「身分証明書」

ロゴ

この点もやはり「簡単には外れない」ことから、プリントネームタグと織りネームタグに共通した重要な役割になってきます。「ブランドイメージ・商品イメージをユーザーにアピールする」という役割です。供給するブランド側からすれば「誇りをもって本物の自社製品であることを表示する」ことであり、所有するユーザー側にとっては「本物を手にする安心感と自信」の裏付けになります。

プリントネームタグと織りネームタグの共通点5・折り曲げ加工

折った紙

プリントネームタグと織りネームタグは双方とも製品に縫い付けられることがほとんどですが、その際に折り曲げ加工をほどこすことがあります。

その折り曲げ加工の手法は双方ともに共通しています。「EF(両端折り曲げ加工)」、「CF(二つ折り曲げ加工)・ピスネーム」、「SC/SHC(ストレートカット・ストレートヒートカット)」、「MHF(マンハッタン折り加工)」、「BC(ブックカバー折り加工)」、「MIF(マイター折り加工)・舟形」など、さまざまな折り曲げ加工の技法がありますが、プリントネームタグと織りネームタグの双方に適用できます。

プリントネームタグと織りネームタグの相違点1・文字と図柄の入れ方

様々なリボンと糸

他方、相違点もあります。まず、わかりやすいところで文字や図柄の入れ方です。

プリントネームタグは、文字通り文字や図柄を「プリント」します。ポリエステルなどの化学繊維系、綿、麻、シルクなどの天然繊維系、金銀パールなどメタリック素材を練り込んだ布地のほか、最近はオーガニックコットン、リサイクルPET系繊維といったものに、インクを用いて「印刷」するのです。

これに対し、織りネームタグは、文字や図柄を「織り込み」ます。一片の布を、最初から文字や図柄があらわれるように織っていくこともあれば、織り上げた布テープにあとから刺繍のように文字や図柄を縫い込んでいくこともあります。いずれにせよ、「印刷」するのではなく、文字や図柄が糸で布と一体化しているのが織りネームタグです。

プリントネームタグと織りネームタグの相違点2・形態

おもちゃのワーゲンからぶら下がったタグ

微妙といえば微妙ですが、形態の面でもちがいがあります。

プリントネームタグは「テープ状」の小さな布製札にプリントしますので、比較的薄手のタグになることが多いです。例外的なものとしてはデニムパンツのベルトまわりに縫い付けられる、皮革製のタグがあり、3センチ×6センチほどのかなり大きい、厚手のものもあります。しかし大多数のプリントネームタグはせいぜい幅が1センチくらいです。

これに対し、織りネームタグは、同じような大きさの布でありながら、文字や図柄を糸で織り込んでいますので、布地そのものがかなり厚手のものになります。

プリントネームタグと織りネームタグの相違点3・縫い付けの強度

ジーンズ

形態というよりも、「厚み」が微妙に異なる以上、製品への縫い付け強度も異なってきます。

プリントネームタグと織りネームタグは、双方とも何らかの折り曲げ加工をほどこして縫い付けますが、縫い代となる折り曲げ部分の厚さは織りネームタグの方がより分厚く、プリントネームタグの方が薄くなります。

そのため、縫い付けの強度はプリントネームタグの方が弱くなり、織りネームタグの方が強くなります。

プリントネームタグの方は縫い付けではなく接着のこともあり、このケースでは製品にくっつく強さはさらに弱くなります。

プリントネームタグと織りネームタグの相違点4・細かい図柄の表現性

ロゴデザイン

相違点「1」の「プリントするか、織り込むか」のちがいから来ることですが、細い線から成っていたり、小さな点から成っていたりする細かい図柄の表現性にはちがいが生じます。

プリントネームタグはインクで印刷しますので、市販のPC用プリンターでよく見かける「600dpi」など、かなり細かい表現が可能です。「600dpi」というのは、「1インチあたり600ドットの点を描写できる」という印字の細かさをあらわしています。通常はここまで細かい印字が必要とされることはありませんが、プリントネームタグの方が細かい描写には向いています。

織りネームタグの方も、文字や図柄の表現に細い糸を用いることで、かなり細かい描写が可能です。しかし、プリントネームタグほどには細かくすることはできません。

プリントネームタグと織りネームタグの相違点5・多色表現の限界

カラフルな花

これも「プリントするか、織り込むか」のちがいから生まれる相違点です。

プリントネームタグの方が、さまざまな色彩や特性の異なるインクの種類が多彩で、多色表現が容易です。

糸で文字や図柄を織り込んでいく織りネームタグでも、多色の糸を用意すれば多色表現が可能ですが、現実には裏写りの影響などがあるため思いどおりの美しい描写がむずかしいことも多いのです。

プリントネームタグの方がカラフルな表現には向いています。コストの面でも、多色表現が必要であればプリントネームタグを選ぶ方が低く抑えることができるでしょう。

プリントネームタグと織りネームタグ・目的に合わせて使い分けを

Awesomeと書かれた看板

衣料品にはほとんどの場合、プリントネームタグか織りネームタグのどちらかを付けることになるでしょう。

両者には以上に書いてきたような性格のちがい、はたらきのちがいがあります。目的に合わせて使い分けましょう。